デーリー東北 2017年1月26日(木)朝刊 コラム「私見創見」より
教訓の継承
失敗糧に新たな歴史を
15日にNHK・Eテレで再放送された3年前の「テレビスポーツ教室~アイスホッケー女子」。三沢アイスアリーナで収録され、4人の女子アイスホッケー日本代表が、青森県内の女子小学生に基礎を教える内容だった。
「スマイルジャパンは、16年ぶりにソチ五輪出場を決めたんだ」。当時のまま流れるナレーションの言葉が、月日を感じさせた。
ソチ五輪最終予選から、はや4年。2週間後の2月9日から平昌五輪の最終予選が始まる。舞台は北海道苫小牧市。日本での開催は女子代表にとって初めてのことだ。
五輪予選を経験した元主将として何か書かねばなるまいと過去の予選を調べていたところ、おわびしなければならない事実が判明した。
昨年2月4日の私見創見で、ソルトレイクシティ五輪予選は「カザフスタン、ドイツ、スイス、日本の4カ国で戦うことになったのだが、出場を勝ち取れるのは1カ国だけ」と書いた。しかし、実際は上位2カ国で、カザフスタンとドイツが出場権を獲得した。
間違った記憶を記してしまった。自分自身、今まで15年以上抱えていたトラウマ(心的外傷)が、とんでもない記憶違いだったことに驚愕している。
いつから事実と記憶が異なるようになったのか。五輪予選は大会ごとに試合形式が違うので、混同してしまったのか。思い当たる理由は、スイスでの最終予選でカザフスタンに負けたことだ。
当時の想定としては、まず格上のドイツとの初戦は最低でも引き分けに持ち込む。たとえ負けても、カザフスタン戦に勝利し、最終日のスイス戦に勝負をかけるという流れだったと記憶している。
ドイツ戦が引き分けで終わり、2大会連続出場に一歩近づいたかのように見えた。しかし、チーム内で何かが狂い始める。見えない「何か」をひしひしと感じながら、主将としてチームをまとめきれなかったことが、負けた要因の一つだ。
そもそもカザフスタンに勝つことを前提にしていたのがいけない。2-5という、まさかの黒星。日本に勝ったカザフスタンは、ドイツに1点差で勝利を収めて出場権を獲得。残り1枠は最終戦のスイスと日本の結果次第となったが、どちらも必須条件の得点差をつけることができずに引き分け。試合を見ていたドイツに出場権が回った。
記憶として残ったのは、スイスに勝ちきれなかったこと、カザフスタンが出場権を得たこと。ドイツが出場権を獲得したことは、頭の中からすっぽり抜けてしまっていたのだ。
過去の予選を調べ直していて、昨年2月に見た水泳日本代表のドキュメンタリー番組を思い出した。五輪でメダルラッシュが続く日本代表は、いかにして世界のトップと戦えるようになったか、個人競技ではあるが代表チームとしてどう改革してきたかなど、とても興味深い内容だった。
その中で、水泳のソウル五輪金メダリストで、現在はスポーツ庁長官の鈴木大地さんの言葉が、スッと心に入り込んできた。「今まで何人もの先輩方が世界と戦ってきて、負けたとはいえ、エッセンスとしてちゃんと受け継がれているんですよね」
負けも失敗も、大切な要素として生きていく。新たな歴史を作るには、繰り返したくない歴史を知り、「なぜ負けたのか」を勝つために生かすことが必要だ。ほぼ毎月開催した強化合宿、カナダ人コーチやメンタルトレーナーの招聘など、ソチ五輪最終予選を勝ち抜くことができたのは、まさに予選敗退の歴史を糧にした結果だった。
平昌五輪最終予選は、勝ち抜いた経験と地元開催という新たな強みを生かして挑むことになる。どうか、「まさか」が二度と起こりませんように。
夢をつかめ、スマイルジャパン!
<二次利用申請許可済み>
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スポーツにあまり詳しくない友人から、「大会の仕組みが理解できなくて~」と感想をもらった回でした。リーグ戦であることから説明しなければなかったなとまたまた反省です。(ごめんね、Mちゃん。)
ソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバーの予選メンバーはどんな思いでいたのかなと考えたこともありますが、おそらく「私たちの二の舞にはならないで」という一言に尽きると思うのです。もっと明るく前向きな記事にしたかったのですが、私の棚卸しの意味も含めてコラムを書かせていただいていてこうなりました。
結局、苫小牧での最終予選を勝ち抜き、2大会連続出場という夢をつかんだスマイルジャパン。
今(2017年7月)は予選を無事勝ち抜いて合宿をしている時期です。出場という切符はすでに手の中。「五輪での1勝」「メダル」という目標に変わり、厳しい代表メンバー争いも続いています。
皆さん、応援よろしくお願いいたします!