私見創見「現役復帰」【デーリー東北 2017年12月14日掲載】

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現役復帰

プレーを通じて伝える思い

「いつ現役復帰したんですか?」「今年の6月です」「えっ!早すぎですよ~」

昨年12月のコラムで、ジュニア時代を含め約30年続けた選手生活に一区切りつけたことを報告した。あれから1年。発言を撤回し、再びスティックを握り氷上を走りまわっている。

先週末、八戸で行われた第27回東北女子アイスホッケー大会に、仙台市の女子チーム「レディースラビッツ」(以下ラビッツ)として出場した。古巣の八戸レッズとラビッツは長年、東北ナンバーワンを競っているチーム。今でこそ全日本選手権Aグループにいるレッズだが、ラビッツに勝つことがレッズの目標だった時期もある。

ファンの方を驚かせてしまったが、なぜライバルとも言えるチームで復帰したのか。大学進学のためレッズからラビッツへ移籍していた笹野由紀江選手がキャプテンだったこと、ラビッツの選手から「一緒にやろうよ」と声をかけていただいたことなど理由はいくつかある。

女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」の小野粧子選手(フルタイムシステム御影グレッズ、旧姓・二本柳)の存在も大きい。6日に平昌五輪代表メンバーが発表されたが、八戸出身の中村亜実選手(西武プリンセスラビッツ)とともに代表入りを果たした選手だ。

彼女との付き合いは長く、私が主将を務めたソルトレイクシティ五輪最終予選メンバーの一人。当時の代表チームには久保英恵選手(西武プリンセスラビッツ)もいた。
小野選手は既婚者で、所属チームでも日本代表でも最年長。レッズの最年長だった自分との共通点も多かった。

何年か前の誕生日に、彼女からメッセージをもらったことがある。
「あゆみさん、覚えていますか?私の初めての世界選手権で同部屋だったこと。ホッケーに対する情熱、試合に対する準備。教えてもらいました。高校生だった私は、先輩の背中、こっそり見てました(笑)そうやって自分と戦うんだな、と。(中略)お互いまだまだ頑張りましょうね。」

一緒に涙した最終予選から16年。「五輪に出る」という夢を彼女は諦めなかった。今年2月に苫小牧で行われた平昌五輪最終予選を見に行き、彼女のプレーと笑顔に刺激を受けずにはいられなかった。

6月に入部し、日光遠征や男性チームと試合をする市内リーグ戦を経ての東北女子アイスホッケー大会。一緒に過ごす時間が増えると会話も増える。
「チームがなくなるんじゃないかと思ったときもあったよね」「ほんとつらかった~」
笑いながら話す、チームメイトの何気ない雑談が、キュッと胸を締め付ける。

今大会初戦に着用した赤いユニフォームは、津波の跡から唯一発見されたもの。ストッキングは震災時に流されて発見されず、代わりを今年ようやく新調した。

以前コラムでお伝えしたが、津波の被害を受けながらも日本代表入りを目指してレッズに入部した選手がいる。高校3年生になった今、進学も決まり自分の道を歩もうとしている。当時は彼女のためにもと思ってレッズでプレーしていたが、東日本大震災から6年半以上が経過しても、仙台在住の私にできることがまだあるんじゃないかと思うようになった。

指導者も一つの道だが、幸い選手生命に影響があるような大きなケガもない。何より、大好きなアイスホッケーができる日常こそ奇跡で、幸せな時間なのだ。

小野選手が感じてくれたように、一緒にプレーすることでチームメイトが何かを感じ取ってくれたらと思う。そして、同じ東北に良きライバルチームがいることが、八戸のためにもなると信じている。

レッズに大差で敗れたものの、ラビッツは来年2月の全日本選手権Bグループへの出場権を獲得した。目標は初戦突破。仙台や東北の選手たちへの応援を、心からお願いしたい。

デーリー東北 2017年12月14日(木)朝刊 コラム「私見創見」より

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