コラム私見創見「試合の在り方~より良い環境を考えたい~」【デーリー東北2018年6月7日掲載】

スポンサーリンク

「正しい競技構造の構築を」

アメリカでプロアイスホッケーコーチとして活躍する若林弘紀さんのお話を聞いて衝撃を受けました。

世界から見た日本の現状や、このような規定があることをご存知でしたか?

導入として語った30年前の出来事については、

賛否両論あって当然だと思います。

ただ、今の子どもたちが成長していくとき、

必要な競技構造が構築されず、

「日本はいつまでたっても規定を満たそうとしないから」と

国際舞台からはじかれる、

ということだけは避けなければならないと私は思います。

【デーリー東北コラム<私見創見>6月7日(木)朝刊に掲載】

試合の在り方~より良い環境を考えたい~

(以下、本文)

もう30年も前なのに、忘れられない試合がある。

八戸市で開催された国際大会に、アメリカ・カナダ・フィンランド・韓国の4チームが来日した。国内からは北海道、東京、愛知などの6チーム、青森県内の4チームが参加。計14チーム、約200人の選手が八戸に集まっていた。

私は4~6年生で構成された選抜Bチームで出場した。
「次の試合は、負けましょう」
監督の口から出た言葉に驚いた。キャプテンをはじめ、選手は「どうして?勝ちたい!」と思った。その時のことは「理由は聞いたよ」と両親も記憶していて、毅然とした態度で説明する監督の姿が脳裏に焼き付いている。

「次の試合、結果によって決勝トーナメントの組み合わせが決まる。勝つとトーナメントで2試合できる枠へ、負けたら3試合できる可能性がある枠へ入る。勝たない方がたくさん試合できるかもしれない」

相手チームには申し訳ないことをしたと思う。正々堂々とフェアな試合をし、勝ち上がることを想定するのが当然だろう。

しかし、国内外から14ものチームが集まっていた貴重な国際大会。選手たちは小学生。いろいろなチームとたくさん試合をしてほしい。経験を積んでほしい。子どもたちを思いやり、試合数を重視した監督の気持ちが、結果的にこの作戦となったかもしれないと、今なら理解できる。主力ではない選手たちも出場機会が増える。「負けたら試合数が多くなるかも」と、複雑な気持ちでプレーした。

日本で当たり前に行われているトーナメントについて、世界に目を向けて考えてみると、全く別の試合環境が広がっている。

「ジュニアから大人の世代まで、リーグ戦を基礎にしていない国は日本だけと言ってもいいくらいです」と話すのは、アメリカでプロアイスホッケーコーチとして活躍する若林弘紀さんだ。アイスホッケーや野球、サッカーなど、どのスポーツにおいてもリーグ戦が基礎になっているのだという。

「国際アイスホッケー連盟の資料によると、レクリエーションではなく競技レベルでの試合で、5点差以上の差がつく試合はクオリティゲームとして認められないとしている。さらに、各年代やカテゴリーで一定数以上の試合数を確保するようにという規定があり、その義務を怠ると世界選手権や国際大会への参加が認められない場合があります」

つまり、負けたら終わりのトーナメントではなく、リーグ戦を基礎として試合数を増やす。10点差がつくような、レベルの異なる相手と試合をするよりも、同じレベルで競い合うことが競技の発展や上達に必要だという考え方だ。

予選のリーグ戦を経た上で、優勝を争うレベルではもちろんトーナメントを利用する場合もある。日本はレベルを考慮することなく、最初からトーナメントが組まれることが多い。

アイスホッケー女子では、規定にのっとって2012年からリーグ戦が増えているものの、地方大会や18歳以下の大会ではトーナメントが多い。16ものチームが参加する全日本選手権Bグループもトーナメント。点差がつく試合もあり、さらに負けたら終わり。同じ参加費を払っているにもかかわらず、公式試合数が全く違ってくる。

試合数が増えると日程の変更や会場の確保などが必要となり、負担も増える。解決策はないのか。

「試合数を計算するとトーナメントと同じ日程でできる場合もあり、試合時間を短くするなどできることはある。選手や子どもたちがより良くプレーできる環境とは何かを真剣に考え、試行錯誤しながら、行動に移してみることが必要です」

たくさん試合をしてほしいという30年前の監督の思いと、若林さんの言葉がつながる。変えるなら今だと思っているのは、私だけだろうか。

広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする