私見創見「リオ五輪に思う」【デーリー東北 2016年7月7日掲載】

スポンサーリンク

デーリー東北 2016年7月7日(木)朝刊 コラム「私見創見」より

リオ五輪に思う

世界の舞台めぐる光と影

8月5日のリオデジャネイロ五輪開幕まで1カ月を切った。約20年前とはいえ、長野五輪を経験した元オリンピアンとしては、胸が熱くなり、同時に痛くもなる時期だ。

アイスホッケー(IH)女子日本代表として、予選が免除される開催国枠で長野五輪に出場、ソルトレークシティー五輪は最終予選で敗退したことは、以前に触れた。

IH女子日本代表が4大会ぶりに最終予選を勝ち抜き、「スマイルジャパン」として出場したソチ五輪は、自宅のテレビや八戸市内のホテルでのパブリックビューイングで観戦したが、気になったのは開会式と閉会式だ。

有名アーティストが歌ったり、花火や光のアトラクションがあったりと華やかなショー的要素が強いが、代表選手なら誰でも出られるとは限らない。日程の都合上、開幕してから現地に入る選手もいるし、逆に試合が終わればすぐ帰国する選手もいる。式に出られるのは一握りの、ある意味で幸運な選手だ。

一方、開会式への出席を辞退する選手もいる。メダルを狙い、競技に集中することを最優先する選手たちだ。開会式は他競技の選手と交流できる時間であり、モチベーションアップにつながる。だが、長い待ち時間や感染病対策など、体調を考慮すると確かにマイナスの面もある。

私が長野五輪に出場したのは20歳の時。寒さ対策が必要だったが、何も考えずに開会式に出席できることを喜んだ。全試合が終わると選手村を出てチームは解散。五輪マークがついた公式ユニホームを着たまま都内を電車で移動した。大会中なのでチラチラ見られるものの、知名度が低い故に聞こえてきた声は、「誰?」。それが現実だった。

「WAになって踊ろう」の曲に合わせ、緊張から解放された世界中の選手の笑顔が広がった閉会式。私がいたのは自宅近くの居酒屋。仕事帰りのサラリーマンに交じり、友人とビール片手にぼんやり見ていた。「さっきまであの人たちと話していたのにな」。悔しくて、寂しかった。ソチ五輪の時、スマイルジャパンは競技日程が長いこともあって、開会式にも閉会式にも出ることができた。テレビに映る選手を見て、「よかったな」とうれしく思った。

国立代々木競技場で3日、リオ五輪日本選手団の結団式・壮行会があった。各選手の地元でも同様の催しが開かれており、出場選手はスイッチが入ったことだろう。

夏季五輪に盛り上がる一方、冬季競技のIHに関わる一人としてはソワソワしている。五輪は4年ごとだが、夏季と冬季の間隔は2年間。男女とも次の平昌五輪の最終予選が近づいているからだ。2次予選を突破した男子は9月1~4日、ラトビアでの最終予選に臨み、ランキング上位の国々に挑む。女子は来年2月9日~12日、地元日本(苫小牧)で最終予選を迎える。

男子バレーはリオ五輪最終予選が日本で開催されたものの、残念ながら出場権を獲得できなかった。大会前の清水邦弘主将のコメントが心に残る。「勝てば天国、負ければ地獄」。競技は違っても同じ経験をしているので、本当にその通りだと思った。

出場できない団体や選手のことを、この時期にマスコミが報じることは少ない。光が当たる場所にも影はあり、当たらない場所は光が差し込むのを待つしかないのだ。

女子IHの最終予選まであと217日。負けられない戦いの日から逆算し、その日のためだけに1日1日を努力する人は何人いるだろう。スマイルジャパンの候補や関係者はそうであってほしい。そして、世界の頂点に挑む楽しさを、また味わってほしい。

今日は七夕。空を見上げ、星に願いを込めよう。皆さんは何を願いますか?

<二次利用申請許可済>

広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする