3歳の男の子が初めて氷上で歩いたときの話〜教えずに全力で遊ぶ〜

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スケートリンクから離れて5ヶ月。

ふと思い出したことがあるので忘れないうちに書いてみる。

 

ジュニアアイスホッケーチームでコーチをしていたときのこと。

 

無料体験で3歳の男の子がやってきた。

お兄ちゃんと一緒で、兄弟でアイスホッケーを始めてくれた。

 

ちっちゃくて、防具をつけただけでめんこくて、

みんなからも「かわい〜♡」と歓声が上がる。

 

もちろんまだ滑れない。

氷に立つことさえできない。

 

まわりの子どもたちはみんな「練習」をしていたけれど、

その子と私にとっては「一緒に遊ぶ時間」。

 

ただただ氷に寝転んだり座ったり。

スケートで氷を削って、雪にして遊んでみたり。

 

「コーチの言うこと聞くんだよ」

親御さんはそう言ってくれたけれど、

なんといってもまだ3歳。

 

「言うこと聞くってどういうこと?」

うん、それでいいのだ。

 

子育ての経験がようやく生きる。

娘にはイライラしてできなかったこと、

してあげられなかったことを、

この子にならできた。

笑っていられた。

 

心の中でごめんねと思いながらまわりをみると、

娘たちはそれぞれ頑張っている。

大丈夫。

この子たちも、成長してくれている。

 

さて、3歳の男の子。

いっぱい遊んでほしいけど、

コーチとしては、

自分で立ったり歩いたり、

やっぱり滑れるようになってほしい。

 

さあ、どうしよう。

こんなとき、他のコーチならどうするんだろう。

3歳の子の指導法なんて教わったこともない。

 

一般滑走の時にフィギュアのスケート教室を横目で見たり、

外国の動画を見たりしたけれど、

目の前にいるのは遊びたい盛りの3歳の男の子。

どうやって教えたらいいのだ。

 

悩んでいても時間は過ぎる。

そうだ、教えなくていいって藤代さんが言ってたな。

 

今の私にできることは、この子と全力で遊ぶこと。

アイスホッケーは二の次三の次。

「楽しかった!」と思ってくれたらそれでいい。

「また一緒に遊びたい」と思ってくれたらそれでいい。

子どもは遊びの中で学んでいくのだ。

 

カラーコーンでお家を作ってみたり。

「ここが玄関!」

「サンタさんきてくれるかなあ」

 

100均で売ってるカラーボールを転がして、

スティックで野球みたいに打たせてみたり。

「コーチ拾ってきて〜」

そのボールは私が全力ダッシュで拾いに行くから

私にとってのいい練習(笑)。

 

 

そんな「遊び時間」が数回続いたある日。

それまで私に「取ってきて〜」と言っていたカラーコーンに、

その子が自ら近寄った。

 

・・・・・!

 

歩いている!!!

 

「〇〇!歩けたねー!!」

 

キョトンとしている男の子。

 

氷上にも関わらず、思わず防具姿のまま抱っこして

ぎゅっと抱きしめてしまった。

 

その時だったか、その次の回だったかは記憶が定かではないけれど、

遊んでいる場所からリンクサイドにいるパパ・ママのところに

ヨチヨチ歩けたこともあった。

 

「いやあ、歩けましたね!すごい!」

 

氷の上で歩けるようになったらさらに可愛さ倍増。

 

よかったなあ

嬉しいなあ

 

大げさではなく、

自分が点数を入れたとき以上に嬉しく感じた。

 

 

チームの練習で滑れない初心者に誰が教えてます?

保護者とかに任せてませんか?

ここを適当に教えちゃダメなんですよ。

そういう子どもにこそ、ちゃんとしたコーチがつかないと。

若林弘紀(プロアイスホッケーコーチ)

 

 

きっとリンクサイドから見ていた方にしたら、

「あゆみコーチ、教えてないで遊んでばっかり」と

思っていたと思うんです。

 

でも、私はそれしかできなかったし、

それでよかったよね、と思うしかない。

 

あの日から数ヶ月。

私がアイスホッケーから離れようと決めた頃にはもう、

一人で滑れるようになってました。

 

子どもの力ってすごい。

あっという間にできるようになる。

 

いつかまたリンクに行くときがきて、

もしその子がスイスイ滑ってパスやシュートをしていたら、

泣く自信だけは、あるんです。

 

 

今、できることはなんですか?

 

 

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