「カッキーン!だったなあ」
車の中で、父と母が笑いながら言いました。
アイスホッケーを始めて1〜2年ほどが経ち、
何年生だったという確かな記憶はないのですが、
多分3年生か4年生、Bチームの試合でのことです。
ある試合で、私はノーマークになりました。
相手は八戸で一番強かった、
赤と白のユニフォームのあのチーム。
ゴールキーパーとの1対1。
ここで決めれば・・・!という場面です。
「カッキーン!」
私が打ったシュートはゴールポストに当たり、
跳ね返ってきてしまいました。
スマホもタブレットもまだない時代。
カメラ好きで新しいもの好きの父は
テレビ局のカメラのような、
大きな大きなビデオカメラで撮影してくれていました。
自宅に帰って試合を見かえしてみました。
テレビ画面にくっついて見ました。
でもやっぱり、
何度見ても、
「カッキーン」。
「いったんゴールに入って戻ってきたんじゃないのかなあ」
子どもゴコロの、わずかな希望。
まだ奥行きのある昭和時代のテレビでしたので、
もしかしたら私はバンバン叩いていたかもしれません。
ゴールしたわけでもないのに、
嬉しそうな父と母。
今となって思えば、
「なんであそこで決めなかったんだ!」と
誰からも責められなかった(責められた記憶がない)ことが、
どんなにどんなに私にとってプラスになっていたことか。
記録に残るより、記憶に残りたい
中居正広
後日、
自宅には前よりもちょっと大きな新しいテレビがやってきました。
「大きな画面で見たら、
もしかしたら入ってるかもしれない」
「カッキーン」のおかげで新しくなった我が家のテレビ。
もちろんパックがゴールに入ってなどいないわけですが、
そんな環境で育ったことに、
改めて感謝しています。
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感謝したいことはなんですか?
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